カウンセリングルーム「なごみ」グループ

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対象喪失(悲しみ)

 私たちは人生の中で、何度かの人の死(別れ)を体験します。
 特に身直な人、肉親、配偶者との別れは、一種のパニックに近い情緒不安定になる場合があります。拭い去ることのできない心的不安定感が長く続き、カウンセラーは何度かこういったクライエントに数多く出会うことになります。カウンセラーは人の死と分かれ(対象喪失)をどのように解釈すればいいのでしょう。

 愛の対象を失った場合、私たちは大別して、2つの心的な反応方向をたどります。

[急性の情緒危機]
 心的ストレス反応としての情緒危機は、急性におこり、比較的すみやかに回復して行きます。
 しかしときには、激しい衝撃を受けて感情的に興奮し、パニック(恐慌状態)を起し、そのため自律神経の乱れ、感情の麻痺、苛酷な現実に直面している悲惨な自分と、それを見ている冷静な自分とに、人格が分裂してしまうような精神状態を起すことがあります。

[持続的な悲哀]
 突然の事故、近親者の急死、恋人との思いがけない別れ、退職を通告された瞬間・・・不安を中心とした心細さ、挫折感からどうしようという模索の心理が続きます。
 これらの情緒危機がしだいにおさまり、一定の適応状態を回復するにつれて、今度は悲哀の心理が始まるのです。
 この悲哀の心理過程は、半年から一年位続くのが常ですが、その間に人々は、失った対象に対する思慕の情、悔やみ、恨み、自責、仇討ちなどの心理をはじめ、その対象とのかかわりの中で抱いていた、さまざまな愛と憎しみのアンビバレンスを再体験します。
 この過程を通して、その対象とのかかわりを整理し、心の中でその対象を安らかで穏やかな存在として受け入れるようになっていきます。

 もし、その途中で、この営みを中断してしまったり、その苦痛から逃避してしまう場合には、失った対象は、心の中で荒れ狂い、その人を脅かすこともあれば、悔やみや自責の念を呼び覚ますこともあり、ときにはその人の心を狂わせることもあります。

 フロイトはこのような悲哀の営みを、「悲哀の仕事」と呼びました。
  私たちは一つ一つの対象喪失体験について、そのたびに「悲哀の仕事」を課せられ、この仕事を一つ一つ達成することなしには、真の心の平和を得ることができないのです。

 ここで言う「悲哀」とは、愛する対象を失うことによって引き起こされる、一連の心理過程のことです。

 失った対象が自分にとって大切もので、あればあるほど、その対象に依存していれば、いるほど、私たちはこの苦痛に耐えることができません。
 これは何かの間違いだ、という現実否認の気持ちが強く、相手がもういないことは頭でわかっていても、どうしても会いたいという思慕の情は、決して消えるものではないのです。

 しかし、現実社会では、たとえどんなに激しい衝撃を受け、悲嘆の極に置かれていても、社会人としての役割を果たすことが出来なければ、社会的人格を全うすることはできません。
 そこで、対象を失った不安からすみやかに立ち直り、社会生活や世間への適応をはからねばばらないのです。
 対象を失ったものが直面するのは、この極めて実際的な課題であると言えます。
 失った対象と二人っきりになりたい気持ちを抑えて、もっとも世間的な仏事の儀式や集まりの中で暮さなければならないのです。

 本当の悲哀の心理は、むしろこの緊急事態が終わり、静かな生活に戻ってから、その人の心の本格的な課題になることが多いと言えます。

 愛する人を突如失った悲しみは、癒えることはありません。
  一つの悲哀の作業が一通りやりこなさないと、本当の別れがこないのです。