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摂食障害
摂食障害とは、摂食行動の異常を伴った多様な心理障害を指し、詳しくは拒食(または不食)、少食、食欲不振などの体重の減少を伴ったものと、過食(または大食)、盗み食いなどの肥満を予測させるものとしての不整食欲(嘔吐や偏食を含む)が含まれます。
[拒食症]
拒食症は、不食、やせ、無月経、便秘などの身体症状と、やせ願望、抑うつ、強迫傾向などの心理を背景にもつ疾患です。
主な症状としての無食欲は、やせ願望から始まることが多く、一方、飢餓感から盗み食い、つまみ食い、残飯あさりなどのむさぼり、気晴らし食い、多食に傾くこともあります。
頑固に不食を続けるものには、日常生活が不能なほどの体重減少をきたし、死の危機と隣り合わせにいながら、回復させられることへの反発から、治療や入院を拒むこともしばしばです。
その精神病理としては、肉体性の否定、清浄さ、精神性、無性性、禁欲への憧れなどにより、成熟拒否と女性性拒否が認められています。
発症前の性格傾向としては、親の手のかからぬ「良い子」としての几帳面さ、真面目な努力家の側面をもち、知的、内向的傾向が強く、真の自己主張や自己決断力が乏しいなどが挙げられます。
[過食症]
過食、大食、多食は「気晴らし食い発作」の形をとった摂食障害をいいます。
大量の食物摂取が繰り返される一方、意図的嘔吐、下剤の使用などがありますが、拒食症のような体重の減少がほとんどなく、やや太り気味の体重を維持しているものがほとんどです。
これと言った原因もなく、ものに取り憑かれたように衝動的に食べ続けた挙げ句、隠れて食べる罪悪感で意図的に嘔吐します。
精神的には拒食と異なり、抑うつ、依存傾向が強く、発症前の性格傾向は拒食症と同じく、良い子で努力家、真面目などの性格面が挙げられますが、嘔吐、気分の動揺、不安、焦燥感は拒食症より遥かに強く、情緒的に不安定で、自己評価が非常に低い傾向にあります。
摂食障害の家族の特徴は、幼児期から母または祖母との感情的葛藤があること、両親、同胞間の対立・抗争が激しいこと。
母または親代わりとしての祖母の養育態度は支配的で、その反応としてクライエントは「ロボットのような従順さ」を示します。
父は専制的で、家庭的でないタイプが多く(無力で権威に乏しいタイプもある)、クライエントに対して放任、甘やかし気味の対応をしているといえます。
そして、両親の間には潜在的な緊張感が常に存在し、妻は家族のために自己の願望を犠牲にしており、内心では夫を尊敬していない面が見えます。
このような家庭状況にいながらも、比較的母親に遠い子どもや男子は引き込まれることが少なく、母親に近く、また同一化しやすい女子が摂食障害を起こしやすいのです。
拒食症、過食症、両者とも個々に基本的欲求(生理・安全の欲求)は満たされているものの、人間のより高度な欲求としての人間関係の欲求(愛し、愛され・尊敬され・自己実現する欲求)が満たされていないことを訴えている姿であり、それを満たす術を知らず、またそれを求めることに臆病になっている姿と受け止めることが出来るように思います。
[摂食障害の治療]
拒食症は、初期には頑張りと孤立を通す傾向が強く、過食症は一人になると過食に走り、そこからの悪循環の開始をコントロールするすべを求めて、外界に依存する形をとります。
いずれにしても、摂食障害は家族の人間関係が密接にかかわっているので、心理療法やカウンセリングの果たす役割は大きいといえます。
現在では、対象関係論を中心とした精神分析的アプローチ、家族療法、行動療法などのアプローチがあり、家族または母親が治療に参加するケースが多いです。
摂食障害は、思春期、青年期のカウンセリングの中で、最近特に増加の傾向を示している心身症です。青年の精神力の欠如、悩む力、耐える力の弱さ。幼少期の育てられ方、家族の人間関係が密接に関わっていることに注目します。
いずれにしても、摂食障害もまたストレス症状の一つといえます。